top of page

虐待防止マニュアル

1.はじめに

障害者虐待防止法及び児童虐待防止法の趣旨を踏まえ、特定非営利活動法人あしたば

が運営する指定特定相談支援事業所、指定一般相談支援事業所、自立生活援助において、虐待を未然に防止するための体制及び虐待が発生した場合の対応等を定め、利用者の利益の擁護のためにマニュアルを策定する。

 

2.障害者虐待とは

(1)「障害者」の定義

障害者虐待防止法では、障害者とは障害者基本法第2条第1号に規定する障害者

と定義されている。同号では、障害者とは「身体障害、知的障害、精神障害(発達

障害を含む。)その他心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁に

より継続的に日常生活又は 社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」とし

ており、障害者手帳を取得していない場合も含まれる点に留意が必要である。ま

た、ここでいう障害者には18 歳未満の者も含まれる。

 

(2)「障害者虐待」の定義

障がい者虐待防止法では、「養護者」、「使用者」、「障がい者福祉施設従事者等」

による虐待を「障がい者虐待」と定義している。

 

(3)「障害者虐待」の種類

①身体的虐待・・・ 障がい者の身体に外傷が生じ、若しくは生じる恐れのある暴行を加え、又は正当な理由なく障がい者の身体を拘束すること。

②性的虐待・・・ 障がい者にわいせつな行為をすること又は障がい者をしてわいせつな行為をさせること。

③心理的虐待・・・ 障がい者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応又は不当な差別的な言動その他障がい者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

④放棄・放任(ネグレクト)・・・障がい者を衰弱させるような著しい減⾷又は⻑時間の放置、他の利用者による①から③までに掲げる行為と同様の行為の放置その他の障がい者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること。

⑤経済的虐待 障がい者の財産を不当に処分することその他障がい者から不当に財産上の利益を得ること。

 

 

(4)障害者虐待の具体的な例

区分と内容と具体例

  • 身体的虐待・・・暴力的行為などで、身体にあざ、痛みを与える行為や、外部との接触を意図的、継続的に遮断する行為

【具体的な例】

・殴る、ける、平手打ちをする、たたく、つねる、踏みつける、髪・耳・鼻等を強く引っ張る、やけどや打撲をさせる

・無理やり飲⾷を強要したり、口に押し込む

・⾷事やおやつを与えない

・罰としての減⾷

・押し倒したり、突き倒したり、投げ飛ばす

・引きずる、衣服をつかんで強制する

・強要

・首根っこをつかむ、頭を押さえつける

・自傷行為の放置

・居室等に⻑時間閉じ込める

・施設外への放置、閉め出し

・服薬や傷等の治療の放置

・身体拘束(柱や椅子やベッドに縛り付ける、医 療的必要性に基づかない投薬によって動きを抑制する、ミトンやつなぎ服を着せる、部屋に閉じ込める、施設側の管理の都合で睡眠薬を服用させる等)/など

 

②性的虐待・・・性的な行為やそれを強要すること

【具体的な例】

・性交

・性器への接触

・性的行為を強要する

・裸にする

・キスする

・本人の前でわいせつな言葉を発する、又は会話する

・わいせつな映像を見せる、更衣やトイレ等の場面をのぞいたり映像や画像を撮影する/など

 

③心理的虐待・・・脅しや脅迫、侮辱などの言語や威圧的な態度、無視、嫌がらせ等によって精神的、情緒的に苦痛を与えること

【具体的な例】

・「バカ」「あほ」等障がい者を侮辱する言葉を浴びせる

・怒鳴る

・威圧的な口調

・ののしる

・悪口を言う

・仲間に入れない

・差別的に扱う

・利用者の差別的な物まね

・子ども扱いする

・人格をおとしめるような扱いをする

・話しかけているのに意図的に無視する

・失敗等を嘲笑したり、それを話すなど利用者に恥をかかせる

・利用者の大事にしているものを隠す、捨てる、壊す/など

 

  • 放棄・放任(ネグレクト)・・・⾷事や排泄、入浴、洗濯等身辺の世話や介助をしない、必要な福祉サービスや医療や教育を受けさせない等によって障がい者の生活環境や身体・精神的状態を悪化、又は不当に保持しないこと。

【具体的な例】

・⾷事や水分を十分に与えない

・⾷事の著しい偏りによって栄養状態が悪化している

・あまり入浴させない

・汚れた服を着させ続ける

・排泄の介助をしない

・髪や爪が伸び放題

・室内の掃除をしない

・ごみを放置したままにしてある等劣悪な住環境の中で生活させる

・病気やけがをしても受診させない

・学校に行かせない

・必要な福祉サービスを受けさせない

・制限する

・同居人による身体的虐待や性的虐待、心理 的虐待を放置する

 

  • 経済的虐待・・・本人の同意なしに(あるいはだます等して)財産や年金、賃金を使ったり勝手に運用し、本人が希望する金銭の使用を理由なく制限すること。

【具体的な例】

・年金や賃金を渡さない

・本人の同意なしに財産や預貯金を処分、運用する

・日常生活に必要な金銭を渡さない、使わせない

・本人の同意なしに年金等を管理して渡さない

 

3.障害者虐待の判断にあたってのポイント

虐待であるかどうかの判断に当たっては、以下のようなポイントに留意する。この時、虐待であるかどうかの判断が難しい場合もあるが、虐待でないことを確認できるまでは、虐待事案として対応することが必要である。

 

(1)職員の虐待をしているという自覚は問わない

職員が虐待をしている自覚がないからといって、その行為が正当化され、責任を免れることはない。虐待かどうかはあくまでも利用者の視点、利用者自身が苦痛を感じているかどうかの観点から判断されるものである。

 

(2)利用者本人の自覚は問わない

自分が何をされているのか、虐待なのか分からない利用者もいる。またコミュニケーションが苦手な利用者もいる。利用者本人の「自覚」や「訴え」がないからといって職員の行為が正当化され、責任を免れることはない。

 

(3)親や家族の意向が障害者本人のニーズと異なる場合がある

施設や就労現場で発生した虐待の場合、障害者の家族への事実確認で「これくらいのことは仕方がない」と虐待する側を擁護したり虐待の事実を否定したりすることがある。これは、障害者を預かって貰っているという家族の気持ちや、他に行き場がないという状況がそういう態度を取らせているとも考えられる。家族からの訴えがない場合であっても、虐待の客観的事実を確認して、障害者本人の支援を中心に考える必要がある。

 

4.利用者・保護者への説明

虐待の定義・種類、被害を受けた際の対応等について、利用者個々の理解力や障害

特性などに応じて、利用者の立場で分かりやすく説明し、継続的に理解が深まるよう

に努めることが重要である。

・一人で我慢しているだけでは問題が解決しないので、虐待に関わる訴え等の行動をためらわないこと。

・虐待に該当すると思う場合には、該当職員に対して、毅然とした態度をとり、明確な意思表示をすることが重要であること。

・身近に相談できる職員がいない場合など、困ったときには、市町村障害者虐待防止センターなど、 関係機関に相談できること。

5.施設職員が留意すべき事項

(1)職員一人ひとりの意識の重要性

・障害の程度等に関わらず、常に利用者の人格や権利を尊重すること。

・職員は利用者にとって支援者であることを強く自覚し、利用者の立場に立った言動を心がけること。

・虐待に関する受け止め方には、利用者による個人差などがあることを、絶えず認識すること。

 

(2)基本的な心構え

・利用者との人間関係ができていると、独りよがりで思い込まないこと。

・利用者が職員の言動に対して虐待であるとの意思表示をした場合は、その言動を繰り返さないこと。

・利用者本人は心理的苦痛を感じていても、重度の重複障害者など、それを訴えたり、拒否することができない場合もあることを認識すること。

・職員同士が話しやすい雰囲気づくりに努め、虐待とみられる言動について、職員同士で注意を促すこと。

・職場内の虐待に係る問題や発言等を個人的な問題として処理しないで、組織として良好な施設環境を確保するための契機とする意識を持つこと。

・被害を受けている利用者について見聞きした場合は、懇切丁寧に相談に応ずること。

・心理的苦痛を感じる言動が職員にある場合には、第三者として、良好な施設環境づくりのため、「虐待防止委員会」に報告するなどの措置を講ずること。

 

(3)障がい者施設内で虐待が起こりやすい背景

①施設等の構造

・施設が密室の構造となっている場合が多い

・外部の目が届きにくい

 

②職員

・指導、しつけの一環という意識のもとで、人権意識が欠如している

・問題行動のある利用者に対する専門的な知識及び支援技術が欠如している

・利用者に対し陰性感情を持っている

・利用者と生理的に合わない

・職員の個人的性格、ストレスが関係している

・職員が他の職員の虐待を内緒にし、仲間としてかばう傾向がある

・職員が上司に通告しても改善されない

 

③利用者

・虐待を受けた利用者が伝えられない場合が多い

・虐待を受けた利用者が伝えても理解されない場合が多い

 

④保護者

・保護者が「契約を解除されては困る」という負い目を持ち、虐待をする側を守る行動を取る

 

6.虐待の未然防止

(1)「虐待防止責任者」の設置

管理者等を責任者として設置することが義務付けられており、管理者等が責任を持って虐待の未然防止に取り組む。

   虐待防止責任者  鈴木 文枝

 

(2)必要な体制の整備

「利用者の人権擁護、虐待の防止等に対応するため、責任者の設置、相談窓口の設置、職員に対する研修その他必要な措置を講ずること」としている。特に、職員の資質向上を図る上では、職場内研修や外部の研修などに計画的に参加することが効果的であり、積極的な取り組みを実施する。

  • 虐待防止委員会 (相談支援、訪問看護 各1名)

  • 研修の実施   (年1回)

 

(3)ヒヤリハット事例の活用

利用者等に被害を及ぼすことはなかったが、施設職員が支援を行う過程等において不適切だと思われる発言や行動の情報を共有し、利用者の権利を侵害するささいな行為から虐待へとエスカレートすることを認識する。

 

(4)チェックリストを活用する

自らの行動等をチェックすることにより、利用者に対する支援の適否、自らのストレスの状況等について振り返る。

*職員セルフチェックリスト、虐待早期発見チェックリスト参照

 

7.虐待の発見・通報

・職員は「職員による利用者虐待」及び「利用者による他利用者への虐待」を発見したときは、まずは虐待を受けている利用者の安全確保を優先する。職員一人では対応が困難な場合は、周囲の職員にも助けをもとめること。

・虐待行為の状況、利用者の様子を確認すること。

・虐待を発見した際には直ちに虐待防止受付担当者へ通報すること。

 

8.虐待発生時の対応

・施設⻑等は、通報の内容等を記録するとともに、情報を分析し、可能性がある場合は、速やかに通報等の記録とともに、足立区 障がい者虐待通報・相談窓口(添付資料)に連絡し指示を仰ぐ。

 

 

 

 

 

 

職員セルフチェックシート

チェック項目                             チェック欄

・利用者への対応、受答え、挨拶等は丁寧に行うよう日々心がけている。 はい いいえ

・利用者の人格を尊重し、接し方や呼称に配慮している。          はい いいえ

・利用者への説明はわかり易い言葉で丁寧に行っている。          はい いいえ

・威圧的な態度をとったり、命令口調になったり、大声で叱責することは

ない。                                 はい いいえ

・子ども扱いするなど、その人の年齢に相応しない接し方をしていない。 はい いいえ

・ご利用者の入浴、排泄時等の異性介助をすることはない。          はい いいえ

・ご利用者の言葉や歩き方などの真似をすることはない。           はい いいえ

・ご利用者の行為を嘲笑、 興味本位で接することはない。          はい いいえ

・職務上知りえた利用者の個人情報については、慎重な取扱いに留意して

いる。                                  はい いいえ

・利用者の意見、訴えに対し、無視や否定的な態度をとることはない。  はい いいえ

・ご利用者の衣服の着脱やトイレ使用の際、他から見えるようにしていな

い。                                はい いいえ

・ご利用者を⻑時間待たせたり、放置したりすることはない。         はい いいえ

・利用者の嫌がることを強要すること、また、嫌悪感を抱かせるような支

援、訓練等を行うことはしていない。                    はい いいえ

・利用者に対するサービス提供に関わる記録書類(ケース記録等)につい

て、対応に困難が生じた事柄や不適切と思われる対応をやむを得ず行っ

た場合等の状況も適切に 記入している。                     はい いいえ

・ある特定の利用者に対して、ぞんざいな態度・受答えをしてしまうこと

がある。                                    はい いいえ

・支援内容をご利用者個人の人格を無視した、職員側の価値観や都合での

 一方的・画一的なものにすることはない。                 はい いいえ

・他の職員のサービス提供や利用者への対応について問題がある

と感じることがある。                            はい いいえ

・他の職員が利用者に対して虐待もしくは不適切と思われる行為を行って

いる場面にでくわしたことがある。                      はい いいえ

・他の職員が利用者に対して虐待もしくは不適切と思われる行為を行って

いる場面を容認したこと(注意できなかったこと)がある。            はい いいえ

・最近、特に仕事にやる気を感じないことがある。                はい いいえ

・最近、特に体調がすぐれないと感じることがある。                          はい いいえ

虐待早期発見チェックリスト

《1.「身体的虐待」発見のサイン》

サイン                                  チェック欄

・身体に不自然なキズ、あざ、火傷(跡)がある *衣服の着脱時等にも留

意する

・1 について原因や理由が明らかにならない場合が多い。

・「施設にいたくない」「蹴られる」等の訴えがある。

・一定の職員を避ける、怯えるなどの表情・行動などがある。

・表情や行動が落ち着かず攻撃的になった。

・失禁や失便が増えた。

・自傷行為や他害行為が増えた。

 

《2.心理的虐待の着眼点》

サイン                                  チェック欄

・自傷、かきむしり等自らを傷つけるような行為が増えた。

・生活リズムが急に不規則になった。 *睡眠、⾷の嗜好、日課等の変化

・身体を萎縮させるような過度の恐怖心、怯えた様子がある。

・突然わめいたり、泣いたりすることが多くなったと感じられることはあり

ませんか?

・過⾷や拒⾷等、⾷事について変化がある。

・以前よりも意欲がなくなった、投げやりな様子になった等と感じることが

ある。

・体調が悪いと訴える機会が増えている。

 

《3.性的虐待の着眼点》

サイン                                  チェック欄

・人に対して嫌悪感を抱いているような態度や言動をとることが増えた。

・人に触れられることを極度に嫌がることが増えたように感じられる。

・歩行等がいつもより不自然であることや、座位が保てないようなことはあ

る。

・肛門や性器からの出血やキズがみられる。

・急に怯えたり、恐ろしがったりする、また人目を避けるようになった。

・一人で過ごす時間が増えた。

・特定の職員が異性の利用者の支援にかかわっていることが多くみられる。

 

《4.ネグレクトの着眼点》

サイン                                  チェック欄

・特定の職員が勤務している日は失禁等で汚れた衣類のままでいる利用者

がいる。

・特定の職員が特定の利用者の日常生活の設定された支援をしていないこ

とが多い。

・利用者から特定の職員が「聞いてくれない」「相手をしてくれない」等の

訴えが多い。

・整容に対して無頓着、あるいは拒否が多くなった。

・自分や他者、物に対して投げやりな態度が見られることが増えた。

・約束事や支援サービスを当日になってキャンセルすることが多くなった。

 

《5.職員の態度にみられるサイン》

サイン                                  チェック欄

・利用者に対し、乱暴な口の利き方をする。暴言を吐く。

・利用者に対し、威圧的な態度が見られる。

・利用者に対し、冷淡な態度や無関心さがみられる。

・利用者の支援や解除に対する拒否的な発言がしばしばみられる。

・利用者に対し、個別支援計画に沿った支援をしていない。

・上司や同僚の助言を聞き入れず、不適切な支援方法のこだわりが見られ

る。

・利用者の直接処遇に関わっている場面が極端に少ない。

・上司や家族との接触を避けていることが多い。

・報告・連絡が粗雑なことはしばしばみられ、行わないこもある。

・遅刻・早退・欠勤が増えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虐待通報連絡票へ下記要項を記入する

記入者氏名:

通報を受けた日:       年   月   日                    

 

虐待等の発生時期:   年   月  日

 

通報者氏名:             

 

虐待の内容・状況等

 

 虐待を受けた者への対応・説明等

bottom of page